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2017年10月 6日 (金)

映画『アンレスト』

曇っている金曜日のニューヨーク。こんなに曇っているのに予報では晴れ時々曇り。降水確率も10%と低いです。本当でしょうか?今日も最高気温が27℃まで上がる予報で、湿度が高いのでムシムシと暑くなりそうです。

昨日の朝ノーベル文学賞が発表されましたね。カズオ・イシグロ氏が受賞して、彼の作品が好きなので嬉しかったです。彼の新作を読んでいなかったので、これを機に読もうかという気にさせてもらいました。ラジオを聞いていたら「何故Haruki Murakamiはノーベル文学賞を受賞できないのか?」という話しをしていて、アメリカでもこんな話題が出るんだなーと改めて彼の人気の高さを認識した日でもありました。
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さて、今回は映画『UNREST』(不安)の感想です。
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この映画は先日『コロンバス』を観に行った際に予告が流れていた事で初めてその存在を知り。慢性疲労症候群を題材としたドキュメンタリー映画と知って強く興味を抱き、帰宅後早速調べたところ、上映がたったの2日間でした。そこでスケジュールをやりくりして、朝からIFCセンターに足を運び鑑賞してきました。

『アンレスト』は、慢性疲労症候群をご自身が患っている女性Jennifer Brea氏が、自分自身を写し、ベッドの上でスカイプやソーシャルメディアを通じて知り合った世界中の他の患者さん達をネットを通じてインタビューして創り上げた映画です。医学的にも正確な内容になるように、医師、科学者等の専門家のインタビューも差し挟まれますし、理解が難しい所はCGを使って説明もされています。
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他の患者さんのドキュメンタリー部分は、健康な映画クルーが世界中に飛んで撮影。ジェニファーさんの自己ドキュメンタリーやスカイプを通じたインタビューが多いですが、自主製作映画という訳ではなく、きちんと制作チームがいる手が込んだ作りになっています。

とは言え、立つこともできず床を這いずり回るような時にもご自身を撮影するジェニファーさん。痛みにのたうち回る姿が映されていたりして、見るのがとても辛い内容ではありました。
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ジェニファーさんは、とても活発な女性で世界中を見てみたいと願っていたとの事。実際CNNのレポーターのような事もやっていたようですし、旦那様とカヌーをしたり、異国を旅したり。慢性疲労症候群を発症した時には、ハーバードの博士課程の真っただ中。旦那様と結婚する直前の幸せな時期だったそうです。

インフルエンザに罹り高熱が出たのをきっかけに、立つこともままならないように。最初は「期末試験のストレスでしょう」と診断されるばかり。でも全然症状が改善しないため、自分達でリサーチしたり、違う医療機関を巡る内に慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)だと診断されました。
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慢性疲労症候群は医学的にも定義が定まっておらず、従って研究も進んでいない病気。未だに精神病の一種だと信じている医者も多いそうで、一般的な認識も「気の病」だと思われがち。そのため患者は辛い症状だけでなく、経済的な問題や社会の偏見とも戦う事を強いられます。

世界中に慢性疲労症候群を患う人は1,500万人~3,000万人居ると推定されています。数字が正確でないのは、多くの慢性疲労症候群を患う人は何らかの精神病と診断されていたり、医療に頼るのを諦めて診療を受けていない可能性が高いから、という事のようです。
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気の病だと決めつけられがちなことの要因として、多くの医師が教育課程で慢性疲労症候群について全く学ばないため知識が不足していること(実際、最初に医師がやることはグーグルで調べることだと専門家が皮肉を言っていました)が挙げられていましたが。ジェニファーさんは、理由は解明されていないものの患者の大部分(86%だったと思います)が女性であることも関係あるのでは?と疑っていました。

『あー、女はヒステリックだからね』というようなメンタリティーがあるのでは?と。実際、男性が影響を受けないことにはお金が出資されないという傾向があることは有名ですよね?確かに、慢性疲労症候群の研究に連邦のお金が殆ど拠出されていない理由は、そんな所にもあるのかもと思わずにいられません。
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とは言え、男性の患者さんもいらっしゃいますし、ドキュメンタリーの中にも写真が大好きで活発に飛び回っていたのに、今では寝たきりになってしまっている男性患者さんも登場していました。この映画を観た後で、「気の病だから」とか、「俺たちだって疲れてるっつーの」とか、「自分に注目を集めたいだけでしょ?」とか言える人は少ないのではないでしょうか?

私自身、全然知識がない病気だったので、患者さん達がここまで苦しんでいるなんて思ってもみませんでした。そしてドキュメンタリーの中で、「慢性疲労症候群を患っている人には軽度の人もいて、一見普通に生活しているように見えたりもします。実際働いている人も多くいて、そういう人達は頻繁に休む人だな…位に思われている可能性が高い」と仰っていたのがとても印象に残っています。
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慢性疲労症候群の患者さんにおける、自殺率は高い傾向があるそうです。それは鬱っぽい人だから病気になったという事ではなく、治る見込みがない事への絶望や社会から置いてゆかれる孤独や恐怖、家族の迷惑になっているという罪悪感、そして社会の偏見に耐えられないという要因があるように見受けられました。

慢性疲労症候群に限らず、体質や健康状態は人それぞれ。いくら自分が健康だからと言って、全ての人がそうであると決めつけないこと。体調が悪い人は自己管理がなっていないからだと思い込まないこと、何でもストレスや精神的な要因のせいであるとアドバイスをしないこと、の大切さを改めて思いました。
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しかしながら、暗くて辛いだけの、説教くさい映画では決してありません。ジェニファーさんが難病に侵されながらも、自分の生きる意味を映画を作ることによって探そうともがき続ける姿に勇気も貰いました。ジェニファーさんに限らず、患者さん達は強くて明るく、何故そんなに前向きでいられるのかと不思議になる程。

是非多くの人に観てもらいたい映画でした。上映してくれる場所を募集しているようですので、上映映画を選べる機会をお持ちの方はいかがでしょうか?知識が身に着くだけでなく、人に対する思いやりも育める内容だと思います。

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