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2017年11月 8日 (水)

『ハイラインのガーデン』のパネルディスカッション

晴れ時々曇りの予報の水曜日のニューヨーク。最高気温は10℃。昨日も午後4時を過ぎた頃から冬の寒さでしたが、今日も1日寒くなりそうです。降水確率は0%。外で長時間過ごすボランティアの日なので雨が降らないのは有難いですが、防寒をしっかりして臨みたいと思います。

ニューヨーク市長選が終わりデブラシオ現ニューヨーク市長が再選を果たしました。まぁ、対抗する候補があれじゃ不思議でもなんでもないですが。個人的には現市長の仕事ぶりにはあまり感心していないので、なんだか凄く残念な気持ちです。大して議論もなされなかった印象ですし(討論会は怒鳴り合いで議論に全くなってなかったですし、メディアでも議論が戦わされていた印象が全くありません)、あっという間に終わってしまったといった感じ。周りのニューヨーカー達もしらけ切っていたようで、「I Voted」のシールを貼って働いたり、ボランティアをしていた人達も「仕方ないよね、他に誰もいないんだから」というようなテンションでの投票だったようです。
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さて、今回は昨日の続き。パネルディスカッション『PANEL: ELEVATING THE NATURE OF MODERN LANDSCAPES』の感想です。
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パネルディスカッションは、午後7時~1時間半にわたって行われました。パネリストは勉強会と同じメンバー。ハイラインのガーデンデザインをされたオランダ人デザイナーのPiet Oudolf氏、フィラデルディアをベースに活躍するランドスケープデザインに関するコンサルタント事務所を経営し、ウドルフ氏と共著してハイラインのガーデンに関する本を今年発表したRick Darke氏、そしてブルックリン・ブリッジ・パークで園芸部門を取り仕切っているRebecca McMackin氏。司会者は、ハイラインの園芸部門の責任者であるAndi Pettis氏でした。
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パティスさんが、ウドルフ氏の事を「ガーデンデザイン界のロックスター」と紹介してらっしゃいましたが、実際世界中にファンが多い有名人。ハイラインを訪れる方の中にも、ウドルフ氏のファンで彼の作品が見たくてハイライン(とバテリーパーク)を訪れたという方が多くいらっしゃいますし。ウドルフ氏の出身国であるオランダ人の方は「オランダではとっても有名なの」と誇らしそうに仰います。
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このディスカッションは、共著を出版されたばかりのウドルフ氏とデレク氏のチームとマケイン氏に分かれて、其々プレゼンテーションをし。その後30分程Q&Aの時間が取られました。
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ウドルフ氏とデレク氏は、この20年程で人々のガーデンに対する認識がかなり変わった事を説明。ごく近年まで、庭には常に元気な花や葉っぱをつけている植物が植えられているべきだと思われていたこと。枯葉やピークを過ぎた植物は全て取り去られていたこと。ガーデニング=コントロールであると思われていたこと。デザインとは、全てが管理下に置かれているように見えることだと信じている人が多かった事を説明(実際、ハイラインを訪れて「花が少なくてつまらない」とか「冬に訪れると見るべきものがない」とか「何で倒れた花をそのままにして放っておくのか」とか仰る方はまだまだ多いです)。
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「環境にあった物だけが生き残っていくのは世の理である」、「ガーデンには自然に対する何らかの感情を抱かせる、架け橋のような効用がある」、「植物の美しさは元気な時にのみ宿るのではない。花が散った後の実や枯れた植物、落ちた葉っぱ等にも美は宿る」、「環境に負荷をなるべくかけないガーデンデザイン」といった考え方は、ウドルフ氏が初めて提唱した部分が大きいようです。

スライドで、実際に枯れた草や色を変えた葉っぱ、落葉が下草の上に落ちている様子等が紹介され、その美しさに会場中が息を飲むようでした。「園芸家に求められるのは観察すること」、「当たり前すぎて見過ごしがちな物を常に新たに発見していく目を持つこと」。これは園芸家に限らず、全ての職業、ひいては人との関係性や日常生活においても当てはまる金言な気がします。
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マケイン氏のプレゼンテーションは、彼女が責任者として管理しているブルックリン・ブリッジ・パーク(The Brooklyn Bridge Park)のガーデンデザインや管理について。ブルックリン・ブリッジ・パークは大好きな公園であるものの、偶にイベントや散歩に訪れるだけで知識を全く持っていませんでした。そのため新しい情報が沢山で、そういった意味でも楽しめました。

ブルックリン・ブリッジ・パークは、フェリーターミナルとして建設されたものの需要が無くなって放置されていたブルックリン側のイーストリバーの岸を、ブルームバーグ市長の承認の下パブリックパークとして生まれ変わらせたプロジェクト。昔は交通手段として使われた建造物が放置された場所を、パブリックスペースとして生まれ変わらせたという意味ではハイラインと似た成り立ちだと言えそうです。
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似ているといえば、ニューヨーク市の公園であるにも関わらず、運営・管理は全てNPOが行っていることも同じ。加えて元々は土がないコンクリートの建造物であった場所に、パブリックスペースを出現させるため、人工的に作られたハイテクな土を使用していることも同じです。

ブルックリン・ブリッジ・パークには11エーカー(約4,4515.42m²)のガーデンがあり、それを6名の園芸家で管理しているとの事。しかしガーデンとはいっても、花が植えられ…といった花壇のような面積は狭く、芝生や木が植えられている場所が殆ど。
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それでも多様性を大切にし、塩沼、湿地帯、草地、林等のセクションを設け。エコシステムを大切にし、介入しすぎない管理を徹底しているとの事。

ハイラインと同じく、枯れた草は春先まで刈らずにそのまま放置。しかも刈った草には虫の卵がついているので、全て処分してしまわずに一部はそのまま園内に残しておく。殺虫剤はなるべく使わない(これもハイラインと同じ)。害虫も直ぐに駆除しないで、ぎりぎりまで介入を我慢する。
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そういう取り組みを行う事によって、2010年にオープンしたばかりのコンクリートの空き地のような場所に、渡り鳥が羽を休めるだけではなく営巣していることが確認され。多くの昆虫の生存が確認され(その中には、30年間ニューヨークでは存在が確認されなかった種類のテントウムシも含まれる)。特定の植物が受粉するのに欠かせない、蜂・蝶・蛾の存在が確認され。根付かなかったと思われていた樫の木が、種から次のジェネレーションを生み出していることが確認され・・・と新たなエコシステムを創世していることが確認されているそうです。

これらの取り組みを知ってから訪れると、其々のピアが果たす役割や狙いがより鮮明に理解できて、散歩がもっと楽しめそうです。まだまだ計画の途上にあるブルックリン・ブリッジ・パークの今後がとても楽しみになりました。
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イベントの後、園芸家や一般の方の感想を聞きましたが、園芸家でも発見の多い、意義深い内容だったとの事。ましてや私の様に全く知識がない人間からすれば、そもそも「ガーデン」を文化施設と捉える考え方や、虫の鳴き声や草木の香り等、パブリックスペースが近隣住民の五感に与える影響全てを考慮したデザインに感心することしきりで、新しい発見の連続でした。
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中でもパティス氏の、「先日参加したコンベンションで行政の財政が苦しいために地域社会にある公園が全く管理されずに荒れ果てていた。そこを地域住民が、ゴミ拾いしたり芝刈りをしたりして管理しています。その地域の住民にアンケートを取ったところ、芝刈りをするたったそれだけの行為が、その人達の生活満足度を上げ、社会に貢献していると感じることにより自己評価が安定し、地域の結束を高める効果を生んでいることが分かったそうです。ガーデンは何も綺麗に手入れされた、高額をつぎ込んだ美しい草花が咲き乱れる庭に限りません。そしてガーデンの果たす役割は、環境問題、都市災害の予防等にととまらず、人々の幸福度を高めるために重要となってくるでしょう。」と仰っていたのがとても印象に残っています。

これから高齢化していく社会の中で、孤立化して孤独に苛まされる人を減らす意味でも、ガーデンという空間が果たすストレス緩和、自然との繋がりを感じさせるといった役割だけでなく。その管理・運営をするといった意味でのガーデニングの果たす役割も見直されるべきなのかもと、強く感じました。
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マディソンスクエア・パークで偶々撮影していた看板。エコシステムの為、今年から落ち葉を掻き集めず、そのまま放置することが記されています。

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